「ファミィさんに会いに行こうと思うんだけど」
「ああ、それが無難だな」
どうやら、ネスティもあたしと同意見らしかった。
あたしは……まったくもって恥ずかしい話だが、未だに戦闘は苦手だ。
まあ、アメル達がたいていすぐに片づけてしまうのでなんとかなっていたけど。
だから、敵に会う確率は少しでも低い方がいい。
それに、街にでるならあたしが適任だろう。一回行ったことがあるし、マグナやネスティが誰か――例えばこっちの大将と鉢合わせしたらややこしいことになりかねない。
「そういえば、ファミィさんってこっちでも蒼の派閥にいるの?」
「うん、ここしばらくは泊まりがけみたい」
このあたりは同じなんだ、と安心していると。
「俺も行く」
挙手しながら、マグナ。
「マグナ?」
「どうしたの、何か顔が怖いけど?」
「だって、本部に行くんだろ? しかもも」
「それがどう……ああ」
何かに気付いたのか、はぽんと手を叩く。
「大丈夫、ここのエクスは女の子をナンパしたりしないから」
……どうやら彼女、向こうのエクスとは対面済みらしい。
もしかして、護衛獣スカウトまでされたんだろうか?
そしてマグナは、まだ不安顔だ。
「……本当に?」
「ホント。まあ、気持ちはわかるけど」
そうよね、あたしも最初にこっちのアメル見た時、何の冗談かと思ったし。
ここでフォルテが、
「……ナンパしてるのか、お前らの世界の総帥?」
「……ノーコメントです」
もっとタチが悪い、なんて言えない。
……できればここのエクスは普通でありますように。
あたしは久しぶりに神様に祈った。
ルゥの家チームはネスティに任せることにして、あたしとマグナは達と蒼の派閥へ。
……それはいいんだけど。
「……で、あれからどうなったの?」
「何が?」
「何って、マグナとのことに決まってるじゃない。少しは進展あった?」
……すっかり忘れてた。
こっちの女の子達、あたしがマグナを好きだと思ってたんだ……
そのマグナはといえば、
「…………」
「…………」
あたしから少し離れて、と何か話していた。
がにやにやしてる横で、突然マグナがどんよりと俯き……あ、が肩を二回叩いた。
「仲良さそうだな……」
あたしが無意識につぶやくと、トリスとミニスも今気付いたように二人を見た。
「あれ? 、あっちのマグナと何かあったの?」
「そういえば、あっちの話はほとんどしてくれなかったわね」
その言葉がなぜかちくりと心に刺さった。
「ん、何?」
が視線に気付いて振り返る。
傍のマグナが気まずそうなのが、さらに気分を重くした。
「……仲、いいんだね」
自分の言葉なのに、別人の声みたいだった。
「え? そりゃあ、あっちじゃお世話になったし、あれからどうなったのかなって……」
そこまで言って、は何かに気付いたようだった。
にんまりとした笑みを浮かべて、
「あー、そっかそっか。なるほどねー」
「あ、あたしは別に……!」
「何?」
「え?」
「『あたしは別に』、何?」
くすくす笑いながら、が問いかける。
「私はなるほど、しか言ってないよ。いったいどういう意味だと思ったの? 私にもわかるように最後まで言ってほしいなー」
うう……彼女、絶対わかってて聞いてる。
心なしか、トリスとミニスまであたしの反応を待ってるように見える。
って、なんでマグナまで似たような顔してこっち見てるのっ!?
「ねえ? 私バカだから、言ってくれなきゃわかんないよ?」
そんなこといったって、言えるわけないわよっ!!
どう考えても、下手なことを言えばさらに追求されそうな雰囲気だし!!
うぅぅ……こうなったら、ここは話題を変えるしかない!
「そっ、それよりも……」
あたしはとっさに思いついた質問を口にした。
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2010.3.6