Sweet Sweet ...
Sweet Sweet ...
ぽかぽか陽気。
澄み渡るような空。
とてものどかな昼下がり。
「……遅いっ!」
「まだ来ないの? 二人とも……」
……なのに、ここに例外が二名。
とトリスである。
なんでイライラしているかというと、理由は簡単。
待ち合わせの相手が、時間を過ぎても来ないのである。
「いつまで待たせる気よ……退屈」
「ふぁあ……」
待ちくたびれたせいか、あたたかな陽射しのせいか。
どちらからともなく欠伸が出、瞳もぼーっとしてくる。
そして。
「……くぅ」
「すー……」
彼女達が目を閉じ寝息を立て始めるのに、そう時間はかからなかった。
「あー……やっと終わったよ」
「さっさと片づけない君が悪い」
それぞれにうんざりした表情を浮かべながら。
マグナとネスティは、待ち合わせ場所へと急いでいた。
「だいぶ遅れてしまったからな……今頃怒っているだろうな」
「うう……ケーキで許してくれればいいけど……」
財布事情を考えて、マグナは頭が痛くなった。
以前うっかりを怒らせてしまい、無理矢理フルーツパフェをおごらされたことは記憶に新しい。
悩んでいるうちに、ようやく待ち合わせ場所にトリスとの姿を見つけ。
「ごめんっ、二人とも! 遅れた!」
謝罪混じりの呼びかけに、しかし予想した怒りの言葉は飛んでこなかった。
それどころか、反応もしない。
「……? トリス?」
おそるおそる覗き込むと。
「……寝てる……」
閉じた瞼と、穏やかな呼吸。
仲のいい姉妹のように、二人は寄り添って眠っていた。
「おい、起きろ。、トリス」
『……ぅん……』
ネスティが揺するも、どちらも呻くだけで目覚めない。
トリスがなかなか起きないのはわかっているが、の方も相当眠りが深いようだ。
しかも――
「なんか、起こすのも悪いって感じがするな……ここまで気持ちよさそうに寝られると」
なにせ、ここしばらくは波瀾万丈な日々が続いていたものだから。
安らいだ表情で眠っている彼女達を見ていると、そっとしてやりたいと思ってしまう。
「だが、用事だってあるだろう……どうする気だ?」
うーん、とマグナは考えて。
「じゃ、もう少ししたら起こすってことで」
どう? と確認を取ってくる弟弟子に、ネスティは仕方ないなとうなずいた。
彼もなんだかんだ言って、彼女達には甘いのだ。
とりあえず、立っていても仕方ないのでその場に腰掛け。
眠る少女達をながめてみる。
幸せそうな寝顔は、だからこそ触れると崩れてしまいそうに見える。
その口からこぼれたのは……
「……チョコケーキぃ……」
「せんぱぁい、あたしショートケーキ……」
……どんな夢を見ているのか、よくわかる寝言だ。
「まったく……」
あきれかえった口調だが、それを見つめるネスティの表情は優しい。
無理もないか、とマグナは思う。
ネスティがに好意を抱いているのは、とうにマグナも気づいていた。
彼女に恋する男としては、由々しき事態なのだろうが。
どこか納得してしまう自分がいるのも、また事実。
誰かのために必死になって、自分の意志を貫こうとして。
強いけど、弱くて。
そんな彼女だから、側にいたい。
護りたいと、思う。
そう思っているのは、ネスティとマグナだけではないだろうけど。
こうして無防備に眠っているの姿を見ていると。
庇護欲というか、保護欲というか。
そういったものをかき立てられる。
できれば、幸せな夢に自分を登場させてほしいところだが。
今は多くは望むまい。
「さて、そろそろ起こすか。日が暮れてしまう」
「……そうだな」
もう少し、見ていたかった気もするが。
わずかな未練を断ち切って、マグナはを揺すった。
「。起きろよ、」
「ん……?」
ぼんやりした瞳がマグナをとらえた。
「あー……おはよぉ、マグナ」
はまだ寝ぼけているようで、どこか舌足らずな挨拶が返ってくる。
その隣ではネスティに起こされたトリスが、眠そうに目をこすっているところだった。
「おはよう、。早く起きないと、用事が終わる前に日が暮れちゃうぞ?」
「……用事?」
ぽーっとした顔で、不思議そうに聞き返し。
「……あーっ!!」
すぐにがばっ、と身を起こした。
「遅いよ二人とも!!」
「ネスがいながら、何やってたのよ!?」
「ごめん、思ったより手間取っちゃって……」
謝るものの、待たされた姫君達の機嫌はそう簡単には収まらず。
「明日でいいから、しっかりおごってもらうからね?」
「あたしはブラウニーサンデーがいいな、ネス?」
「なっ、なんで僕まで……」
『連帯責任!!』
びしっ、と。
声をそろえて、二人の少女は言ったのだった。
「……半々、だからな」
「覚悟はできてる……」
言われた方は、げんなりとして目配せ。
きっと明日は、てんこ盛りのパフェやケーキを見ながら財布の心配をするのだろう。
それでも。
「何おごらせようかなー♪」
「そういえば、最近できた喫茶店のベリーパフェがおいしいって」
「あ、それもいいなぁ……」
楽しそうにはしゃぐを見ていると、まあいいかという気がしてくる。
彼女が幸せそうに笑ってくれるなら。
とりあえずの課題は。
にとって、ケーキやパフェに勝る存在になることだな。
男二人、こっそりそう思ったある日の午後。
10万ヒット企画、辜乃 荊様のリクエストです。
お昼寝というか、うたた寝ですねこれは…ちょっとしか見守ってないし(汗)
結局主人公に甘いマグ&ネス。がんばれ、敵はある意味強力だ(笑)
辜乃様、こんなのでよろしければどうぞ。
2003.7.08 天音