「前途多難な私達」劇場〜あの日のカケラ編〜
「前途多難な私達」劇場〜あの日のカケラ編〜


 ただならぬ雰囲気をまとった片翼の天使。
 その足元に倒れているアメル。前には襲われているマグナ。

 「ど、どうしようネスティ……なんかやばそうだよ……」
 傍らのが震えている。
 召喚主の様子がおかしいとネスティを呼びに行ったまではよかったが、さすがにこんな事態だとは予想していなかったのだろう。

 なんとかしないと、マグナまで危ない。
 しかし、敵はアメルを倒した相手だ。
 うかつに踏み込めばネスティ達まで二の舞になりかねない。
 どうしようか考えあぐねていると。

 「……ネスティ、こうなったらあれいこう」
 「……あれ……って、まさか……」
 「そう、あれ」

 不吉な予感を抱いたネスティに、しかしはあっさりうなずいた。
 確かにあれをやれば状況は変わるかもしれない。
 しかし、やったらどうなるかわかっているだけに実行に移せない。

 「気持ちはわかるけど、相手があんなじゃ下手に攻撃するより確実な手よ」
 ……汗一筋たらしながら言われても説得力はないが。
 しかし、一理あるのもまた事実。

 「お願い! マグナを助けると思って!!」
 懸命に頼まれ、さすがにネスティの心も揺らいだ。
 これもマグナとのため。
 そう言い聞かせ、彼はこの状況における最強呪文を口にした。


 「……さ、さあ今のうちに、二人で愛の逃避行だ」(←棒読み)


 ぶち――ん!


 「うふふふふふふふふ」
 地の底から這い上がるような笑い声が辺りに響く。
 ゆらりとアメルが身を起こした。

 「ネスティの分際で勝手に愛の逃避行なんて……エルゴが許してもあたしが許しません!!」
 「あっ、ちょっと待ち」
 「邪魔っ!!」


 どがっ!!


 「きゃあぁぁぁぁぁ……」
 悲鳴と共に空へと消えていく片翼の天使。

 そして……
 「うふふふふふふ……」
 「うわあっ、来た―――っ!!」
 「アメル落ち着いて、お芝居だってばっ!! そんな物使ったらネスティが死ぬ―――っ!!」
 森の中にしばし愛の嵐(?)が吹き荒れた。

 「誰か俺を回復してくれ……」
 ダメージ受けたままのマグナをほったらかしにして。





 あの日のカケラ・完。





 「ねえ、ルウ達の……」
 「俺達の出番は……?」
 ない。一切合切欠片もない。
 「しくしく……」



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CDドラマ、山場のあのシーン。聖女様だったら絶対こうなる(断言)
そして出番のないフォルテ達(苦笑)