「前途多難な私達」劇場〜楽園を継ぐ者たち編〜
「前途多難な私達」劇場〜楽園を継ぐ者たち編〜


 「先生がどんな人かって?」
 マグナの問いに、青年……ウィルは不思議そうに問い返した。

 「うん、どんな人か気になっちゃって」
 「そうだなあ……」
 ウィルはしばらく考え込み。

 「……雰囲気としてはアメルさんに似ているかな」
 「いっ……!?」
 マグナの動揺をよそに、ウィルは続ける。

 「見た目は人畜無害でのんきそうなんだけど……敵とみなした相手には容赦なくスヴェルグ使うとことか、召喚術が得意な割に剣や斧をぶんぶん振り回すとことか、お仕置きのバリエーションがやたら多いとことか、むかついた相手に『ごめんなさい』を言わせるためには手段を選ばないとことか、好きなもののためなら剣の力がなくても人間離れできるとことか……」
 一つ一つを聞くたびに、マグナの顔が青ざめていく。
 ウィルの顔も、一つ言うたびに引きつっていく。



 「…………」
 「…………」
 ついに、ウィルは黙り込んだ。
 マグナもしばらく何も言えなかった。

 「……先生、いなくてよかったね」
 「……ああ」
 「君も苦労してるんだね……」
 「お互いにね……」


 というか、大丈夫かこの島の平和は。
 そして何者だ、先生とやらは。
 心配になったと同時に、やっと心の友に巡り会えた気がした。
 マグナ・クレスメント、20歳のある日。



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3番外編にて。ウィルの「アメルに似てる」発言から思いついたネタ。
きっとこの世界では、誓約者達にも黒い人がいるでしょう(苦笑)