「前途多難な私達」劇場〜おいも行進編〜
「前途多難な私達」劇場〜おいも行進編〜


 「おーいもー、おーいもー、たーっぷりおーいもー♪」
 台所から聞こえてくる楽しげな歌声。
 普通ならほほえましい光景なのだろうが……

 「なんだよ、あれ」
 「えーと……おいもが安かったって、さっきアメルが大量に買ってきたのは見たけど……」
 通りがかったマグナとは、嬉々として調理に励むアメルの後姿を呆然と見つめた。
 テーブルの上や、床にこれでもかと置かれた芋入りの袋。
 その中央に立つアメルは、まさしくおいもの女王様。

 「おーいも、おいもたーっぷり、おーいもーがやーってくる♪」
 なんて嫌な歌だ。
 歌っているのがアメルでなければ、マグナ達もそうは思わなかっただろう。
 だが敵は、と芋にだけは一途な聖女様だ。
 しかも、大量に芋がやってくるという事態は、どう見ても現在進行中だ。

 「あれ……どうやったって一日二日じゃ食べきれないよな……」
 「当分おいも料理ね……リューグとかには悪いけど」
 「おーいもー、おーいもー、ほくほくおーいもー♪」
 どんよりとため息をつくマグナとに気づかず、アメルの歌は延々と続いていた。



 ちなみに芋づくしとアメルの歌は、1週間強、毎食続いた。







 「♪おーいもー、おーいもー……どうしよう、頭から離れないからつい歌っちゃう」
 「実は俺も……」

 「……クス」
 屋敷中の人間の反応を見て、ほくそ笑むアメルがいたのは別の話。



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メロディは「キューピーパスタソースたらこ」のあれでお願いします(笑)