第24話
第24話 故郷探しは危機一髪


 アメルもなんとか回復し、私達はようやく出発することができた。
 道中ちょっとしたこともいくつかあったけど、今度は順調に目的の方向目指して進んでいる。
 ……………………
 いや、まあ……黒の旅団の偵察兵や、そこらへんで群れているはぐれ召喚獣に襲われたことを「ちょっとしたこと」でくくれるようになっちゃったのは、何か悲しいものがあるけど……
 今まで相手にしたのがシャレにならない方々だからね……





 「ずいぶんと歩いてきたけど、それらしい村は見あたらないな……」
 「方向は間違っていないはずなんだが……」
 だいぶ進んだところで、マグナとネスが困ったように言った。
 当然だろう。村なんてないんだから。
 さすがに言えないけど。

 そして、目の前に広がるのは鬱蒼とした森。
 「このままでは森の中に入ってしまうわね」
 「その村には目印になるようなものはないのか、アメル?」
 「ごめんなさい、そこまでは……」

 ここからあれが見えたりしないかなー……
 そう思いながら見回してみたら……本当に見えた。
 空に向かって立ち上る煙が。
 「……ねえ。あれ、煙じゃない?」
 「本当だ。ありゃあ、かまどか何かの煙だね」
 モーリンが言った。
 「それじゃ、あれを目印にしていけば……」
 「人のいるところに辿り着けるでござるな」
 ミニスの言葉をカザミネが引き継いだ。
 「行ってみましょう!」
 明るく言うトリス。
 もちろん、誰も反対しなかった。



 「ほら、家があった」
 「……でも一軒だけだね」
 トリスと私が言ったように、見つけた家はたった一軒だけ。
 これじゃちょっと「村」とはいえない。

 「まあ、人がいるなら道が聞けるさ」
 マグナは安心させるようにそう言うと、ドアの前に立ってノックした。
 「すみませーん!!」
 アメルが固唾をのんで、住人が出てくるのを待つ。
 他のみんなにもその緊張が伝わった頃、ドアがゆっくりと開いた。
 そこから出てきたのは……

 「へっ、召喚獣?」
 「はぐれか!?」
 そう、ここか無限回廊でしか登場しない貴重な(?)召喚獣、ペコだった。
 しばらく私達を見ていたが、何かに気づくとあわてて中に引っ込んでいく。

 「ひょっとしてこの家、あの召喚獣が住んでるなんてことは」
 トリスの言葉に私は一瞬、「太郎、ご飯よー」「はーい」なんてやってるペコ一家を想像した。
 ……見てみたいかも……っていうか、太郎ってなんだ私。
 が、そんな思考もネスの「君はバカかっ!」に遮られた。
 「今のはサプレスの召喚獣だ。おそらくこの家の主人の召喚獣かなにかだろう」
 「ってことは、この家は召喚師のものってことになるわけか……」
 フォルテがつぶやいたとき、再びドアが開いた。
 みんなが気づいて、そこに向き直ったと同時に。

 「アフラーンの一族が古き盟約によりて、今命じる……」

 出てきた人物が呪文の詠唱を始めた。
 「みんな、散って!」
 トリスが叫ぶ。
 「来たれっ!!」


 どごおぉぉん!!


 「あ、あぶねぇっ」
 かろうじて避けたレナードは、冷や汗をたらしていた。
 その真横では、名前のわからない草が黒こげになってしおれている。
 ……こんなのまともにくらったら……

 「いきなり何するんだ、君は!?」
 マグナが怒って言うが、相手も負けてはいない。
 「お、お黙りなさいっ、悪魔の手先のくせに!!」
 「はい?」
 私以外の全員がぽかんとする。
 そりゃ、いきなり悪魔扱いされたら怒る前に相手の正気を疑うわよね……

 「とぼけたってダメよ。ルウはちゃんと知ってるんですからね! キミたちが禁忌の森に封印された仲間の悪魔を解放して、悪いことをしようと企んでるって事を!」
 ……だからって、全部ペラペラしゃべるのもどうかと……
 そもそも、悪魔の仲間だって時点で間違ってるんですが。
 「誤解です! あたし達、そんなことをしに来たんじゃ……」
 「そうよ、ただ道を……」
 でも、アメルもトリスも最後まで言えなかった。
 ルウが再び呪文を唱えだしたのだ。


 どおぉぉぉん!!


 今度はトリスの前の小さな花がかなりの広範囲で炭になった。
 ……さっきよりパワーアップしてます……
 「だまされるもんですか! 二度と悪さができないように、ルウが懲らしめてあげるわ!!」
 ……人の話を聞こうねー……
 私の願いもむなしく、ペコやポワソがこっちに向かって飛んできた。



 『きゃあっ!!』
 私とアメルの悲鳴が重なる。
 飛んできたペコ・ポワソ軍団のほとんどが私達に攻撃してきたのだ。
 なんとか避けたけど、いっぺんに攻撃してきたから威力もバカにできないものになってる。
 「うっとおしいんだよっ、テメエら!!」
 やはり攻撃してきたポワソ達を槍で叩きのめすバルレル。
 どうやら攻撃はこのあたりに集中しているらしい。
 他のみんなの所なんて少ししか行ってないし。
 ……………っていうか、どうして私まで―――――!?

 「こいつっ、達から離れろっ!!」
 「なんでアメルやばかり狙うのよ!?」
 「知らないっ!! ポワソ達に聞いてよ―――っ!!」
 もちろんみんなも数を減らしてくれているし、私達だって応戦してはいる。
 それでもなぜかこっちにばかり来る。
 あーもー、ポワソやペコってだけでもやりにくいのに!!

 「アフラーンの一族が古き盟約によりて……」
 聞こえてきた呪文がまた嫌な予感を倍増する。
 まさかと思いそちらを見ると、こっちに向かってサモナイト石を掲げているルウの姿。
 ちょっと待った、私達危険人物決定ですか――――っ!?

 仕方ない、やりたくなかったけど何かで詠唱を止めるかサモナイト石を手放させるかしないと……
 この際乾電池でも看板でもいい、この状況をなんとかできるなら!
 ルウ、ごめん!!
 私はサモナイト石を取り出すと、いつも通りに集中して。
 「出てきてーっ!!」
 魔力を解放した。

 サモナイト石を握っている右手からは紫の光が……
 ……紫?
 私はあわてて手を開くと、紫色の石が消えていくところだった。
 しまった、間違えて霊属性使っちゃったよ――――っ!!
 無属性以外でこれやったことないから余計に不安……どうなっちゃうの…?

 そんな私をよそに、状況は進み始めていた。
 辺りがふっと薄暗くなり、異様な雰囲気が漂う。
 「……?」
 誰もが不審に思ったのか動きを止める。
 ルウも呪文は続けているものの、不思議そうな顔をしている。
 やがて、何もないところからうっすらとした影。それがだんだんはっきりしてくる。

 「これは……!」
 「えっ!?」
 ネスとルウが息をのむ。
 それはルウに視線を移すと、いくつもの目を赤く輝かせ。


 どおぉぉん!!


 ルウの足下が爆発した。

 「……うそ……」
 みんな呆然としていたけど、私が一番びっくりしていた。
 だって、まだ時間的に9話ぐらいだよ?
 ゲームではもうちょっと先じゃないと呼べないはずなのに。
 「ブラックラック……?」
 トリスが呆然とつぶやく。
 そのブラックラックは、とまどったように私を見た。
 次の指示を待っているのだろうか。

 「えーと……ありがと。また力が必要になったら呼ぶから……」
 なんとかそれだけ言うと、ブラックラックはうなずいて霧のように消えた。
 そこには誓約済みのサモナイト石だけが残る。


 「……って、ぼーっとしてる場合じゃなかった! あの子は……」
 マグナの言葉で我に返ったみんな。
 あわててブラックラックがさっき攻撃したところを見る。
 そこにはルウがちょっとふらつきながら立っていた。
 ルウは再び呪文を唱えようとして……固まった。
 金魚のように口をぱくぱくさせている。どうやら声が出ないらしい。

 全員、その様子に顔を見合わせ。
 「今だっ、押さえろ――――っ!!」
 直接攻撃組のほとんどがルウに向かって行った。
 ルウもナイフで応戦しようとしたものの、ふらふらした状態では勝てるわけない。
 あっさり取り押さえられ、なんとか召喚獣共々おとなしくなった。





 んで、私達はルウをなだめつつ事情を話した。
 説明し終わった頃にようやくルウもしゃべれるようになった。

 「じゃあ、本当に旅の人だったんだ。なぁんだ……」
 「なぁんだ……ってね、こっちはその勘違いでとんでもない目に遭わされたんだからっ!!」
 あのーミニス、とんでもない目に遭ったのは私達だけのような気がするんだけど……
 まあ、こっちも手荒なことしちゃったし。お互い様か。

 「ごめんなさい。こんな所に旅人がやってくる事なんてなかったから、てっきり森を荒らしに来た悪魔の手先かと思って……」
 「そういえば、さっきも悪魔とか封印とか言ってたわね。どういうこと?」
 トリスが不思議そうに訊いた。
 訊かれた方のルウもきょとんとした顔になる。
 「キミ達、あの森がなんて呼ばれてるか知らないの?」
 みんなそろってうなずく。

 「アルミネスの森っていうんだよ、あそこは」
 「アルミネスだって!?」
 思わず声をあらげて身を乗り出すネス。
 「知ってるのか、ネス?」
 「封印の森だよ……あの森は、その昔リィンバウムに攻めてきたサプレスの悪魔の軍勢が封じこめられているという、禁忌の森だといわれているんだ」
 「おいおい、それってあれか? 天使と悪魔が戦ってできたっていう……」
 「私も知ってる。でも、あれっておとぎ話なんじゃないの?」
 フォルテとミニスも怪訝そうに言った。

 「おとぎ話じゃないわ、本当の話よ。ルウたちアフラーンの一族はあの森を中心に出るサプレスの力を研究するために、ずっと昔からここで暮らしてるんですもの」
 ルウはそう言いながら、近くを飛び回っているペコの頭をなでた。
 「ほら、この子達も元気でしょう?この辺りはサプレスの魔力が強いからなのよ」
 「そういや、いつもより体が軽い気がするな……」
 バルレルがぶんぶん腕を振り回す。
 そういえばそうだっけ……だから、いきなりブラックラックなんて呼べたのかな?

 「でも、ここのところ森の様子がおかしいの。なんだかざわついて、イヤな感じで。まるで誰かが出入りをしてるみたいだったから……」
 「俺達が荒らしていると勘違いしたわけか」
 ルウの言葉をマグナが締めくくった。
 再びルウがごめんなさい、と頭を下げる。

 「しかし、なんでまた悪魔だって勘違いをするかねぇ?」
 レナードがたばこを吹かしながら言った。
 ルウはああ、というような顔になると、
 「あの森には結界があって、人間は入れないのよ。だから……」


 「ちょっと待ってくださいっ!! それだと、森の奥には人は住んでいないってことですよね……?」
 叫ぶアメルの声は、だんだん小さくなっていく。
 顔面蒼白になって、手までぶるぶる震えていた。
 それには気づかず、ルウが平然と告げた。
 「もちろんそうなるよ。悪魔が封印された森の側に、人間が住めるわけないもの」
 アメルとルウを除く全員が、あっという表情になった。
 「それが本当なら、あたしの……あたしのおばあさんの暮らしている村はどこにあるの……?」
 アメルの声は震えていた。

 「落ち着いてっ、アメル」
 「そうだよ、きっと途中で道を間違えただけだって!」
 「気休めはよしてっ!!」
 トリスとマグナのフォローも逆効果。
 二人は呆然として、口をつぐんでしまった。

 アメルの興奮はますますヒートアップしていく。
 「変だって思ってた! 村の名前も目印も、おじいさんは教えてくれなかった……あたしが会いたいって言っても、おばあさんのところに連れてってくれなかった!」
 「それは、事情があったからだって……」
 「おい、アメルっ! 余計なこと考えるんじゃねぇっ!!」
 双子もなだめようと試みるが、もはやアメルは聞いていない。

 「いや……あたしの信じてたことって……一体、何だったのぉ―――っ!!」
 アメルの絶叫が響き渡る。
 誰も、何も言うことができなかった。



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更新遅れて申し訳ありません……
四苦八苦した結果、ほとんどゲームと変わってない……
ちなみにペコ一家のあたりは管理人の実話です(笑)
誓約者のみなさんは今回お休み。次回は出ます。……半分だけ。さて、どっちのチームでしょう?