第6話
第6話 再会と悩みと


 ギブソン・ミモザ邸に戻ると、ちょうどアメル達が再開を果たしているところだった。
 「心配をかけたようだね、アメル?」
 「ロッカ、リューグ……!!」
 マグナやトリスもよかったね、とアメル達に言う。
 ……そう、あの後思い出して合流しました。ごめんね二人とも。

 「でも、よくあいつらから逃げられたな?」
 「運がよかったんです。風向きが変わってあいつらの方に火が向かってくれたから、その隙をついて……」
 「はっ、テメエらの放った火に巻かれてりゃ、世話ないぜ」
 ……なんか話だけ聞くと、ルヴァイド達がマヌケっぽい……
 でもそうではないことは、二人の全身の傷やぼろぼろの服を見ればわかる。

 「さて、つもる話もあるだろうけど……そこの二人は怪我人なんだから、続きはまた後で。いいわね?」
 ミモザが仕切ることで、その場はいったんお開きになった。
 ミモザがリューグの、アメルがロッカの手を引いて中へと入る。
 ……リューグは嫌がってるみたいだったけど、ミモザが気にするはずもなく、引きずるような格好になる。
 ……オモチャにされたりしないよね……多分。

 「……」
 みんなが次々とお屋敷へ入っていく中で、ネスだけは難しい顔で佇んでいた。
 マグナとトリスもそれに気づいて、問いかける。
 「どうしたんだよ、ネス?」
 「マグナ、トリス。不自然だと思わないか?」
 「何が?」
 「あの二人がここまで無事に辿り着けたことがだ。よく考えて見ろ。僕達が逃げられたのは、彼らが敵を足止めしていてくれたからだ。邪魔の入らない状態で連中がみすみす彼らを逃がすと思うか?」
 ……ネス、大正解。

 「言われてみれば……」
 「罠、かも。居場所がわからなければ、知ってる奴に案内させればいいからね」
 「!?」
 「の言うとおりだ。もしかしたら、奴らはとっくにここを……」

 私はネスの背中を思い切り叩いた。
 ばんっ! とやけにいい音がした。
 「なにするんだ!?」
 「過ぎたことをぐちぐち言ったって仕方ないでしょ? 罠なら罠で、連中が来たときのことを考えた方がいいって」
 「それは、そうだが……」
 「だーかーらー……」
 私はがしっ! とネスの腕を掴んだ。
 「いつまでも、こんなトコで考え事しない! 来たら追っ払ってやる、ぐらいの勢い持ちなさい!!」
 言いながら、ネスを引っ張って中に入った。



 「お、おい!! わかったから放してくれ!!」
 「いーえ、わかってない!」
 焦るネスティと、聞く耳持たない様子の<。二人の声が遠ざかり、ついには聞こえなくなる。
 「……なんか……ミモザ先輩に似てきてないか?」
 「同感……」
 残されたマグナとトリスは、そんな二人の後ろ姿を呆然と見送っていたのだった……




 ネスを応接室に放り込んで(つまりミモザ達に押しつけて)から部屋に戻ると、私はベッドに寝ころんだ。
 もうすぐイオス達が来る。
 それはわかっていたけど……まさか、あんな風に会うとは思わなかった。

 イオスだって、悪人じゃないんだ。
 ただ、デグレアやルヴァイドのために戦っているだけ。悪魔に操られているとも知らずに。
 でも……

 アメルをさらわれるのは嫌だ。
 だけど、イオス達もなんとか助けてあげたい。
 私に何ができる?

 コンコン、とノックの音が響いた。
 「はい?」
 思考を中断して、上半身を起こす。
 ドアが開いて、ミモザが顔を出した。
 「どうしたの?」
 「お客さんが来たみたいよ」
 セリフの割に、表情は硬い。
 「……あんまり嬉しくないお客さんみたいね」
 「ええ、そうね」
 来たか……もう少し時間が欲しかったけど。


 「あいつらが、あなた達を襲った連中なの?」
 窓から様子を見たミモザが問いかけた。
 ちらりと見えただけだけど……私らじゃなくても何事だ、と思うような人数……
 「わかりません……あの時は必死だったし……」
 「どちらにしても、友好的にはとうてい見えないけどね」
 むしろ殺気ギンギンっす……
 これをここにいるメンツの半分で迎え撃てと?

 「しかし、まさか王都の中で仕掛けてくるとは思わなかったよ」
 ……私はむしろ、王都の中をこの人数で乗り込んでくる方が不思議なんですが。
 目立つぞ、絶対。

 「幸い、敵はまだ私達が気づいたとは思っていない。そこにつけ目がある」
 「どうすんだい?」
 「ひとつ、注意でもしてきてやるか。人の屋敷の前で何をしてるんだ、とね?」
 「じゃあ、私はこれからアメルちゃんを連れてお散歩でもしてこようかな〜」
 「そんなことをしたら、先輩にご迷惑が!」
 ……とあわてたのはマグナ達後輩グループだけ。
 他の面々は心得たようで、適当なチームに分かれる。

 「君達はどうする?」
 「マグナ、トリス、。君達もミモザ先輩の方に……」
 「私、残る」
 ネスの言葉を遮って、私は言った。
 こっちにはイオスが来る。なんとかして、止めてみたかった。
 それに、イオスに会えばわかるかもしれない。私は彼に、何をしてあげればいいのか。

 「あたしも!」
 トリスが手を挙げて言った。
 「……なら、俺はあっちに行くよ。アメル達の方を手薄にするわけにもいかないしな」
 「わかった。……アメル達、お願いね?」
 ああ、とマグナは力強くうなずいた。

 「俺も残るぜ」
 「よすんだリューグ! 僕達が出ていったらあいつらの思うつぼじゃないか?」
 「今更関係ねぇだろ!」
 またも言い争うロッカとリューグ。
 あのー、二人とも……もうちょっと穏便に会話できんのですか……?
 それに……
 「……言い争ってるヒマ、なさそうだよ?」
 窓の外に見える影。それらが、明らかに移動を始めていた。

 「じゃ、私達は裏口から行きましょ」
 「気をつけて!」
 ミモザチームはあわただしく、応接室から出ていった。
 「さて、私達も行くか」
 そして、私達ギブソンチームも行こうとしたけど。
 「あ、ちょっと待って」
 ストップをかけたのは、なぜかトリスだった。
 「どうした、トリス?」
 「うん、あのね。思いついたことがあるんだけど……」


 「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」
 私達の声が見事にハモる。
 トリスの提案。それは、ある意味とんでもないものだった……



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ちょっと短め……
できれば次のVSイオスは一気にまとめたいので。ここで切りました。

次回は……ふふふ(意味深な笑み)