第79話
第79話 心、支えて


 かちゃり、とカップの音だけが響く。
 誰かがため息をつく声。

 「……大丈夫でしょうか、
 「どう見ても無理していたわね……」
 アメルが心配そうにサキの部屋のほうを見、ケイナが何かを思い出すような表情をする。

 「の無理なんて、今に始まったことじゃねえだろ」
 ぽつりとつぶやかれた言葉に、誰もが発言者を振り返った。
 その当人は、すでに茶を飲みきってタバコをふかしている。

 「レナードさん?」
 「気づいてなかったのか? あいつは強がってるけどな、時々ちぃと前のネスティと似たようなツラするんだよ。苦しいけど言えないって、そんなツラをな」
 「言えないって、あたし達にも……?」
 呆然とつぶやくトリスに、レナードはああ、とうなずいた。

 「聞かれても適当にごまかして、誰も口にしなくなるまでやり過ごす。今までそうしていただろ?」
 「そういえば……」
 「そうですね。彼女は、自分から言い出す以外はほとんど話してくれませんから」
 シオンが静かに肯定した。

 「あいつなりに事情があるんだろ、きっと」
 いつになく真面目な表情でフォルテ。
 そのフォルテを、シャムロックが何かを言いたそうに見つめていた。

 「でも、それじゃダメ……いつかは耐えられなくなっちゃうよ……」
 泣きそうな声でトリスが言う。
 それきり、しばらく沈黙し。

 「…………」
 一人が席を立った。
 そのまま部屋を出て行く。

 「あ……」
 「……まあ、いいでしょう。ここは彼に任せましょう」
 シオンはそう言うと、空のカップを置いて立ち上がった。
 「お茶のおかわり、まだありますか?」







 「ん……?」
 私はぼんやりと目を開けた。
 ……あれ? なんで普段着のまま、布団も掛けずに寝てたんだっけ……?
 記憶の糸を、どうにかたぐり寄せて。

 「……あ」
 思い出した。
 あれからエステルと話し込んじゃって、そのうちついうとうとしちゃって……

 「エステル?」
 呼びかけてみたけど、返事はない。
 この様子じゃ、まだ寝てるかな……?

 どうしようかな?
 目もさえちゃったし……

 とりあえず起き上がると、ノックの音がした。
 「はい?」

 ドアが開いて、そこに立っていたのは。







マグナ  ネスティ  ロッカ  リューグ



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